ガルリSOLの荒井信吉展を見る

 東京銀座のガルリSOLで荒井信吉展「無記の記録」が開かれている(11月18日まで)。荒井は1970年東京都生まれ、1996年に多摩美術大学を卒業している。2003年にガルリSOLで個展を開き、ここSOLでは今回で3回目となる。



 画廊の中央に金色の立体が設置されている。建築で使われる足組に金箔を貼っている。金箔を除けば甚だぶっきらぼうな作品だ。すぐに連想するのはデュシャンのレディーメイドだが、それにしては建築資材の一部というのは少しずれているように思えるし、金箔を貼っているという造作もレディーメイドをずらしているように思える。こんなものを画廊に設置している荒井信吉の姿勢がとても面白い。

 周囲の壁にはシリコンゴムを吹き付けて積層にした厚みのある平面などが展示されていた。しかし、建築資材を設置した大きな立体作品は、今週のどんな個展をも圧倒してしまうのではないか。

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荒井信吉展「無記の記録」

2023年11月13日(月)―11月18日(土)

11:00-19:00(最終日は17:00まで)

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ガルリSOL

東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル6F

電話03-6228-6050

https://galerie-sol.com/

 

日本橋高島屋S.C. 本館6階 美術画廊Xの重野克明展を見る

未亡人

 東京日本橋高島屋S.C. 本館6階 美術画廊Xで重野克明展「或る未亡人の版画コレクション」が開かれている(11月20日まで)。重野は1975年千葉市生まれ、2003年に東京藝術大学大学院修士課程美術研究版画専攻を修了している。主に77ギャラリーで個展を開いているが、高島屋美術画廊Xや養清堂画廊でも発表を繰り返している。



 重野克明は物語意を描いてきた。だがそれは絵物語や小説の挿絵などのような劇的な物語ではなく、ある種私小説のような物語だ。今回もタイトルの「或る未亡人の版画コレクション」に絡めてパンフレットに次のような文章を載せている。

「僕が死んだらこれを売って暮らしなさい。」生前版画家の夫は言った。〇〇さん、〇〇画廊に持って行けば良いお金になるからと鳩のイラストの黄色い菓子缶を妻に渡した。パンパンになったその菓子缶には大量のスケッチや版画が詰め込まれていた。なかにはレシートの裏に描かれたものまで。こんなものが本当に売れるのかしらと途方に暮れるお盆明けの未亡人。

 

 以前ある画商が有名な画家Nの雑誌のカットの原画などを売ろうとその画家を訪ねたことがあった。Nは若い頃雑誌にカットなどを多く描いていたことがあったので、カットやドローイングがたくさん残っているのではないかと考えたのだ。しかし、すでにNの住む区立美術館の学芸員が来てそれらを寄贈させた後だった。美術館にカットやドローイングを寄贈したNは間違っていた。それらを収蔵しても美術館が展示する機会はほとんどないだろう。しかし、画商が販売したら多くのファンが買い求めるだろう。作品を1点でも持てばその画家のファンになると聞いた。たとえそれが偽物であっても。ピカソは作品数が多いので世界中にファンがいる。たくさんの作品を描いてそれを多くの人たちに持ってもらうことは重要なのだ。

 上記の未亡人のエピソードはもちろんフィクションだ。だが、虚実のあいまいなところで重野は興味深い物語を作品のテーマにしている。私にとって見逃せない作家の一人だ。

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重野克明展「或る未亡人の版画コレクション」

2023年11月1日(水)―11月20日(月)

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日本橋高島屋S.C. 本館6階 美術画廊X

電話03-3211-4111(代表)

 

 

Stepsギャラリーの中村ミナト展を見る

 東京銀座のStepsギャラリーで中村ミナト展が開かれている(11月11日まで)。中村は1947年、東京生まれ。1969年に武蔵野美術大学彫刻家を卒業し、1970年に同大学専攻科を卒業している。ときわ画廊で10回個展を開いたほか、1975年以来各地のギャラリーで個展を繰り返している。作品は東京や京都の国立近代美術館に収蔵されている。


 画廊には大きな彫刻作品が1点だけ置かれている。アルミ製の大きな作品だ。天井まで届きそうな背の高い「く」の字型のアルミの板を三角形が支えている形だ。大きなビスが目立っていて、金属の立体であることを主張しているようだ。そのビスがアクセントにもなっていて美しい。

 事務所のテーブルには小品が4点ほど並んでいる。

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中村ミナト展

2023年10月30日(月)―11月11日(土)

12:00-19:00(土曜日は17:00まで)日曜休廊

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Stepsギャラリー

東京都中央区銀座4-4-13琉映ビル5F

電話03-6228-6195

http://www.stepsgallery.org

 

ギャラリー58の田中彰展を見る

 東京銀座のギャラリー58で田中彰展が開かれている(11月11日まで)。田中は1949年高知県生まれ、1974年多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業。いくつかの画廊で個展をした後、2004年ギャラリー汲美で個展を開き、汲美が閉じた後は主にギャラリー58を中心に活動している。昨年はギャラリーKINGYOでも個展を開催した。



 田中は人の顔を描いている。田中の作品はフランシス・ベーコンと共通するものがあるが、ベーコンに見られる神経症的な傾向は田中には見られない。それが良いとか悪いとかではなくて田中は健全なのだ。

 モノクロのドローイングも1点紹介したが、ドローイングも面白い。ドローイング展も企画しても良いのかもしれない。

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田中彰

2023年11月6日(月)―11月11日(土)

12:0019:00(最終日は17:00まで)

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ギャラリー58

東京都中央区銀座4-4-12 琉映ビル4F

電話03-3561-9177

http://www.gallery-58.com

 

 

ギャラリー・ビー・トウキョウの原田圭捺展を見る

 東京京橋のギャラリー・ビー・トウキョウで原田圭捺展「常日頃」が開かれている(11月11日まで)。原田は1999年東京生まれ、2022年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画専攻を卒業し、現在同大学大学院修士課程版画コース2年在学中。昨年このギャラリーで初個展を行っている。



 ドローイングそのもののようなリトグラフ作品は、大胆な筆致がそのまま残され、日常的な情景が衒いもなく写され、それが魅力的な画面を作っている。人物のデフォルメや省略が洗練されていると感心した。

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原田圭捺展「常日頃」

2023年11月6日(月)―11月11日(土)

11:00-19:00(最終日17:00まで)

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ギャラリー・ビー・トウキョウ

東京都中央区京橋3-5-4 第一吉井ビルB1F

電話03-5524-1071

http://www.gallery-b-tokyo.com/