ギャラリーN神田社宅とギャラリーαMの加藤巧展を見る

 東京神田のギャラリーN神田社宅と、東京東神田のギャラリーαMで加藤巧展が開かれている(ギャラリーN神田社宅では7月16日まで、ギャラリーαMでは8月6日まで)。

 加藤は1984年愛知県生まれ。14,15世紀の絵画技法家・チェンニーノ・チェンニーニの『 Il Libro del l’Arte』の研究を起点とし、現代につながる材料/メディウム史を紐解きながら絵画材料研究と絵画制作を並行している。主に名古屋、関西方面で発表をしてきたが、VOCA展2020に選ばれ、またアーティスト・イン・レジデンスとして、シンガポールチェコフィンランド、英国で制作してきた。

 さて、加藤について語るのは難しい。ギャラリーαmの企画者千葉真智子のテキストを読んでもよく分からない。その千葉の言葉、

 

メディウムを介してダイヴしようとすること。

絵を造りながら加藤さんがしていることを、こう言ってみることはできないだろうか。

絵画が「絵画」として存在する以前に遡る時間、あるいは美術とされる枠を超える領野。あえてメディウムを引き受けながら、なおそこに向かおうとすること。

 

【以下、ギャラリーN神田社宅の展示】


 ギャラリーN神田社宅の展示は新作で構成されている。こちらでは具象的な形態が見えるが、直接それらのものを描こうとしているのではなく、一度水彩絵具などで描いたものを、改めて面相筆で描いている。一気に描き殴ったような筆触が実は面相筆で何度も重ね描きされているという。

【以下、ギャラリーαMの展示】

上の作品の一部


 ギャラリーαMの展示は古い作品から新作まで並べられている。残念ながら私には加藤巧の作品を語ることが難しい。αMの展示期間はまだ3週間以上残っている。ぜひ自分の眼で見て判断してほしい。

     ・

加藤巧展

ギャラリーN神田社宅:2022年7月2日(土)―7月16日(土)

13:00-20:00(最終日18:00まで)月・日・祝休廊

 

ギャラリーαM:2022年6月18日(土)―8月6日(土)

12:30-19:00(日・月・祝休廊)

     ・

ギャラリーN神田社宅

東京都千代田区神田紺屋町46 アルタビル6F

電話080-3060-7809

https://www.f-g-n.jp/places/place_kanda

※JR神田駅東口または東京メトロ銀座線神田駅から徒歩2分

 

ギャラリーαM

東京都千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F

電話03-5829-9109

https://gallery-alpham.com/

 

 

Steps ギャラリーの吉岡まさみ展を見る

DM葉書



 東京銀座のSteps ギャラリーで吉岡まさみ展「echo」が開かれている(7月23日まで)。吉岡は1956年、山形県生まれ。1981年に東京学芸大学教育学部美術科を卒業している。1982年に東京のかねこ・あーとGIで初個展、以来同画廊やときわ画廊、巷房などさまざまな画廊で個展を行ってきた。2007年からはアメリカやドイツなどでも個展を行っているし、2015年にはセルビア国立美術館で倉重光則とセルビア人画家との4人展を行った。またドイツで日独のアーチストによるグループ展にも参加している。



 今回は直方体の木のパネル2枚を組み合わせている。それぞれ3色に塗り分けていて、3色の中央部分の色面の幅がすべて共通となっている。その左右の色面はその一部が切り取られているという設定のようだ。つまり色面は左右に長く続いていることになる。

 設置は横であったり縦であったり斜めであったりしている。どのように設置するのも自由だとのこと。

 DM葉書に書かれた吉岡のことば。

 

美しい妖精エコーはいつも

誰かが話しかけてくれるのを

待っているのです

 

 画廊の事務室にいつもいるオーナーの吉岡は美しい妖精エコーではない。念のため。

     ・

吉岡まさみ展「echo」

2022年7月13日(水)―7月23日(土)

12:00-19:00(土曜日17:00まで)日曜休廊

     ・

Stepsギャラリー

東京都中央区銀座4-4-13琉映ビル5F

電話03-6228-6195

http://www.stepsgallery.org

 

 

銀座蔦屋書店ギンザ アトリウムの川内理香子展を見る

 東京銀座の銀座蔦屋書店ギンザ アトリウムでカ川内理香子展が開かれている(7月13日まで)。川内は1990年東京都生まれ、2017年に多摩美術大学大学院絵画学科油画専攻を修了している。2022年のVOCA大賞受賞作家。


 抽象画のような背景の上に線画で具象的な図像を描いている。抽象画的な背景も魅力的だし、そこに描かれた図像との組み合わせも成功していると思う。なるほどVOCA賞受賞作家だ。

 と書きながら一抹の不満も感じずにはいられない。そもそも毎年VOCA対象を選ぶことに無理があるのではないか。優れた才能が毎年コンスタントに現れる保証はない。また時には2人以上現れることもあるだろう。この辺りはコマーシャリズムの要請が優先されるのだろう。

 川内が優れた若手画家であることは否定しないが、いささか過大評価のそしりを免れないのではないか、と天邪鬼なジジイは危惧するのだ。

     ・

川内理香子展「Colours in summer」

2022年7月2日(土)―7月13日(水)

※営業時間は店舗HPを確認されたい

     ・

銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM

東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 6階

電話03-3575-7755

https://store.tsite.jp/ginza/

 

 

山本弘の詩

 ここに山本弘の詩集『ありぢごく』第1集がある。発行は55年秋とあるから、山本弘25歳の時だ。そこから何編か紹介する。

 

  (ひきはがされた夢が)

 

ひきはがされた夢がさめきらぬうちに

どろにまつわれつかれた足をそのまゝ

冷たい床の中になげ出して

逆上した頭にたかいたかい木の枕をあてがい

すゝだらけの天井を睨みつけて

ぶっそり云ってやる

  ――――おたんこなすめ――――

 

 

 

  (夜のとばりは狂ほしく)

 

夜のとばりは狂ほしく

朝のしとねは空々しく

昼のまなこはねむりねこ

 

喰らった酒は垂れ小便

貯水の池から水道の

蛇口に出てくる生の水

 

恋は移って青い葉

又々変って赤い実

千変変ってばか踊り

 

ぷらぷら廻る油虫

一と月前の油虫

今夜の部屋の恋の味

狂い踊った恋踊り

 

 

 

  (やい がまがえるの)

 

やい

がまがえるの

糞ったれ畜生奴!

いつまでもじいっとしてるが良い

お前のいぼいぼの上に

熱い長い小便を垂れてやる

やい、

いぼいぼ奴、

僕がかく酔っぱらってゐたとて

お前がいやらしい横眼で

じろりとにらんだところで

僕は

お前の横で再び

おちんこ出して昨日とおんなし様に

カウンタアの下え

ながあい小便を垂れてやる

 

 

 

  (今後一切口を利かざること)

 

今後一切口を利かざること

そうだ

そう云うことも可能なはずだ

さしでがましい人間共よ

お前の忙しく動き廻るからだに

僕は

  僕はねえ

横向いて

    ぺ、 ぺ、

 

お前が女の尻追い廻したところで

お前が暗い道とぼついたところで

僕な何んにも云やしない

僕は

    ぺ、 ぺ、 なんだ

 

 

 

ガルリSOLの丹羽啓個展を見る

 東京銀座のガルリSOLで丹羽啓個展が開かれている(7月22日まで)。丹羽は1994年名古屋市生まれ、2017年に金沢美術工芸大学彫刻家卒業、2019年同大学美術工芸研究科彫刻専攻を卒業し、2020年より同大学彫刻科助手を務めている。

 2020年にこのギャラリーで個展をし、今回が2回目になる。

 今回は黒御影石段ボール箱を再現している。大小12個の段ボールが並んでいる。どれもムクということで重量はかなりありそうだ。

 ほかに同じ黒御影石で封筒を作っている。黒御影石は世界各地数カ所で採取されたもので、その産地を送り状のように作品の一部に刻印している。



 丹羽は、「世界中の物資の往来が私たちの生活や環境に多大な影響を与えているとして、この時代の記録として、遠い大地との繋がりをとどめるように世界中から来た石を段ボール箱に加工し」ている。

 段ボール箱を留めるガムテープも石を磨いてそれらしく作っている。

     ・

丹羽啓個展「大地より」

2020年7月11日(月)―7月22日(金)

11:00-19:00(最終日17:00まで)

     ・

ガルリSOL

東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル6F

電話03-6228-6050