東京都現代美術館の「MOTコレクション 光みつる庭・途切れないささやき」を見る

 東京木場公園東京都現代美術館で「MOTコレクション 光みつる庭・途切れないささやき」が開かれている(6月19日まで)。

 1階の「光みつる庭」では、中西夏之、石川順恵、堂本右美など絵画を中心に、2階の「途切れないささやき」では、舟越桂の木彫や、ボルタンスキー、福田尚代の作品、駒井哲郎の版画などが展示されている。

中西夏之

中西夏之(部分)


 中西夏之ハイレッドセンター高松次郎赤瀬川原平中西夏之)の中でも最も優れた画家だ。

三瀬夏之助

石川順恵

堂本右美


 三瀬夏之助や石川順恵、堂本右美などが常設に並ぶようになったのだと、しばし感慨にふける。

ボルタンスキー

ボルタンスキー

ボルタンスキー

ボルタンスキー


 今回の目玉(と私が考える)ボルタンスキーがMOTの収蔵品である贅沢さ!

康夏奈

康夏奈

康夏奈


 康夏奈(吉田夏奈)の作品は天井から逆円錐形に吊り下げられており、鑑賞者は下から円錐の中に入って見上げることになる。すると新しい視界が広がる。

宮島達男

アンソニー・カロ


 いつもの場所に宮島達男のデジタル数字が点滅している。なぜか「0」がない。またアンソニー・カロの鉄の立体も変わらぬ場所にある。

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MOTコレクション 光みつる庭・途切れないささやき」

2022年3月19日(土)―6月19日(日)

10:00-18:00(月曜休み)

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東京都現代美術館コレクション展示室

ハローダイヤル 050-5541-8600

 

 

東京都現代美術館の藤井光「日本の戦争画」を見る

 東京木場公園東京都現代美術館で「東京コンテンポラリー アート アワード 2020-2022 受賞記念展」が開かれている(6月19日まで)。受賞作家は藤井光と山城知佳子、山城は30分ほどの動画「チンピン・ウェスタン 家族の表彰」を展示している。

 ここでは藤井光の「日本の戦争画」を紹介する。パンフレットより、

 

 藤井は、1946年に東京都美術館で、占領軍関係者に向けて開催された戦争記録画の展覧会を、アメリ国立公文書館に現存する資料をもとに考察した映像とインスタレーションで再現します。資料から垣間見える戦争記録画の処置に関する占領軍の逡巡をとおして、時局の変遷によって、その捉え方も変化する絵画を巡る議論へ鑑賞者を導きます。

小磯良平「カリジャテ会見記」

小磯良平「日緬条約調印図」

宮本三郎シンガポール陥落」

藤田嗣治サイパン島同胞臣節を全うす」

井原宇三郎「特攻隊内地基地を進発す」



 ここには153点の戦争画をベニヤ板に置き換えた藤井の作品が並べられている。タイトルを見れば有名な戦争画だが、それが無機質なベニヤの作品に置き換えられている。戦争画アメリカ軍に接収されたのち、日本に永久貸与という形で返還?されたが、まだ全貌が展示されたことはない。

 戦後70年を超えたから、もう戦争画展が開かれてもいいのではないか。

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「東京コンテンポラリー アート アワード 2020-2022 受賞記念展」

2022年3月19日(土)―6月19日(日)

10:00-18:00(月曜休み)

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東京都現代美術館企画展示室3F

ハローダイヤル 050-5541-8600

(入場料:無料)

 

高島屋美術画廊Xの村松英俊展を見る

 東京日本橋日本橋高島屋本展S.C.本館6階の美術画廊Xで村松英俊展「with stone」が開かれている(7月4日まで)。村松英俊は1988年静岡県生まれ、2016年に東北芸術工科大学大学院彫刻領域を修了している。

 村松はバイクやメジャーなど、古い既製品(レディメイ)のパーツの一部を大理石に置き換える作品を制作している。今回もスケートボードや栓抜き、剪定鋏、テープディスペンサー、鉛筆削り、車のタイヤの破片などを一部大理石の作品として制作している。

 作家のことば、

 

気に入ったものを石にして残したい

ものの時間を止めているような、新たな時間を創り出しているような感覚

石化していくイメージ

いずれは朽ちていくもの

数千年、数万年後、石だけでも残っていたら、そのものが存在した証になれないだろうか

人が創り出したものの機能的な形や偶然に生まれた形の面白さ

自然が創り出した石が内包する時間の大きさ、どれひとつとして同じもののない唯一性

自然物である石の美しさと人が作りあげた美的な造形性

遠い未来に欠片だけでも残せたらと思う



 村松は2018年にはステップスギャラリーで個展を行っていた。高島屋の画廊Xでの個展は2019年以来2回目となる。変わった作品だが、評判がいいのだろう。

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村松英俊展「with stone」

2022年6月15日(水)―7月4日(月)

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日本橋高島屋本展S.C.本館6階 美術画廊X

東京都中央区日本橋2-4-1

電話03-3211-4111

 

 

クロスビューアーツの「植物区」を見る

 東京京橋のクロスビューアーツで「植物区」展が開かれている(7月2日まで)。参加作家は濱田富貴と吉田収。濱田は1972年福岡県生まれ、2000年に武蔵野美術大学大学院美術専攻版画コースを修了している。ギャラリーなつかではもう8回も個展をしている。

 吉田は1960年鳥取県生まれ、1985年に武蔵野美術大学を卒業し、現在は小田原短期大学教授。ルナミ画廊やトキ・アートスペースで個展を重ね、昨年はギャラリーなつかでも個展を開いている。

 タイトルの「植物区」のとおり、版画の濱田も木彫の吉田も植物をテーマに作品を作っている。版画と立体だが、植物を共通テーマにして違和感のない展示になっている。

濱田富貴

濱田富貴

濱田富貴

濱田富貴

濱田富貴

吉田収

吉田収

吉田収


 どちらも小品だが、密度の濃い空間を作っている。

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「植物区」

2022年6月13日(月)―7月2日(土)

11:00-18:30(土曜日17:00まで)日曜休廊

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クロスビューアーツ

東京都中央区京橋3-4-2 フォーチュンビル1F

電話03-6265-1889

http://gnatsuka.com/

※クロスビューアーツはギャラリーなつかの併設画廊

 

 

 

ギャラリーなつかの王麗楠展を見る

 東京京橋のギャラリーなつかで王麗楠展「増殖」が開かれている(6月18日まで)。王は1993年中国河北省出身、2016年に湖北美術学院大学漆工芸を卒業。2020年金澤美術工芸大学大学院漆工芸を修了し、現在同大学院後期博士課程在籍中。昨年ギャラリイKで日本初個展を行った。

 作家のことば、

 

私が自然と人間の精神世界の共鳴であり、自己の内的世界に芽生えた「美」を内省し、

それを乾漆技法によって漆の造形表現を探求します。


 タイトルどおり、内的なエネルギーがむくむくと増殖しているような造形だ。おそらく已むに已まれぬ内なる欲求があるのだろう。若さを感じたのだった。昨年のギャラリーKの個展では、もう少し複雑な形でややうるさかった印象があったが、今回はだいぶ刈り込まれてすっきりしている。

 乾漆技法で漆を扱ってかぶれないかと尋ねると、かぶれると言ってかぶれた腕を見せてくれた。私も子どものころ山谷を走り回ってウルシの樹に触れてかぶれた経験があるので、辛いだろうと同情した。でも以前漆の作家が慣れるのですと言っていた。

 金澤美術工芸大学大学院修了の折りには学長賞を受賞している。日本に留学してますます活躍することを期待しています。

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王麗楠展「増殖」

2022年6月13日(月)―6月18日(土)

11:00-18:30(土曜日17:00まで)

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ギャラリーなつか

東京都中央区京橋3-4-2 フォーチュンビル1F

電話03-6265-1889

http://gnatsuka.com/