TOWEDの「もう無い図形」を見る

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 東京曳舟のギャラリーTOWEDで「もう無い図形 内田百合香・福士千裕 二人展」が開かれている(11月24日まで)。二人の履歴をホームページから引く。
 内田は画家。1990年生まれ、神奈川県出身。中国:日本=4:1のクォーター。2013年に船戸厚志と「春のカド」を立ち上げ定期的に展覧会を企画。2018年、船戸厚志、村松佑樹とともにgallery TOWEDを立ち上げ、運営を行う。これまで新宿眼科画廊ほかで個展6回。
 福士は1989年横浜生まれ、絵描き。漫画を描いて作った漫画本をもって同人誌即売会COMITIAにしわしわとのサークル「五番街マック」としてヌッと出没したりもする。あとはウロウロしたり、歌を歌ったり、coffeeしたり、うどん食べたり、セルフケアしたり、YAKINしたりしている。これまでmograg galleryなどで個展4回。
ギャラリーの1階では二人の共作を、2階では内田と福士それぞれの作品を展示している。二人は横浜の美術予備校で一緒だったとかで、以前も二人の共作を発表しているという。
 まず、1階の共作から、

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 ついで2階の福士の作品、

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 同じく内田の作品、

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 ギャラリーは金土日のみのオープン。
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「もう無い図形」 内田百合香・福士千裕 二人展
2019年11月8日(金)-11月24日(日)
13:00-20:00(金・土・日・祝日のみ開廊)
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ギャラリーTOWED(トウド)
東京都墨田区京島2-24-8
https://gallery-towed.com/
※原公園横の信号のある交差点から数メートル

 

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ギャラリー古今の瀧田亜子新作展「陽光の洗足池」を見る

f:id:mmpolo:20191108203232j:plain 東京大田区洗足池のギャラリー古今で瀧田亜子新作展が開かれている(11月10日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。2年間ほど中国へ留学し書を学んできた。2003年ギャラリー・オカベで初個展、以来、なびす画廊での個展を中心に銀座の画廊で発表を繰り返してきた。一昨年なびす画廊が閉廊し、その後藍画廊やギャラリーなつかなどで個展を続けている。
 いつものように三角形のウロコ型を繰り返す大小様々なミニマル風の作品を展示している。ギャラリー古今は洗足池医院に併設されており、1階は医院の受付を兼ねている。展示は2階と3階までの3つのスペースが使われており、3階の小部屋には瀧田の書も展示されている。書は「ねむれない/一人で/月をながめる」と書かれている。

 絵はいつものモノクロームに藤色が加わっている。またすでに描いた作品を切って貼り合わせリズムに変化をつけている。入り口を入ってすぐ右手の大きな壺の後ろに展示されている作品が面白かった。

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 ギャラリーのある洗足池医院は東急池上線洗足池駅の改札を出てすぐ右手の洗足池商店街に面していて、駅から徒歩1分。洗足池駅の前は中原街道が走っていて、道の反対側は洗足池公園になる。画廊を出たあと、洗足池のほとりを散歩すれば秋を楽しめるのではないか。
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瀧田亜子新作展「陽光の洗足池」
2019年11月1日(金)−11月10日(日)
14:00−18:00(金土日のみ開廊)
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ギャラリー古今
東京都大田区上池台2-32-4
http://www.senzokuikeHP.com/cocon/

 

ギャラリー砂翁の及川伸一展「-のようなもの―」を見る

 東京三越前のギャラリー砂翁で及川伸一展「-のようなもの―」が開かれている(11月16日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー汲美、ギャラリーテムズ、ギャラリーゴトウ、ギャラリー砂翁&トモス、Shonandai My ギャラリーなどで発表してきた。

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 及川は具象的なものを嫌う。純粋に抽象的な形だけで作品を成立させることを目指していて、それは成功していると思う。いつの個展でもどの作品でも完成度が高い。およそ破綻というものがない。
 具体的な形に頼ることなく、しかし形を完全に手放すことなく作品化している及川の仕事は、とても貴重に思われる。最小限の形=形態=イメージでマンネリに陥ることなく制作を続けていくことは、おそらく端で見るよりはるかに大変なことなのだろう。
 ただ、いつも完成度が高いと書きながら、そのことに不平を言うのはおかしいが、時には及川の破綻を見てみたい気もする。
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及川伸一展「-のようなもの―」
2098年11月6日(水)−11月16日(土)
11:00−18:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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ギャラリー砂翁
東京都中央区日本橋本町1-3-1 渡辺ビル1F
電話 03-3271-6693
http://saohtomos.com
地下鉄(銀座線・半蔵門線三越前駅A1番出口より徒歩3分

 

田村隆一『詩人の旅 増補新版』を読む

 田村隆一『詩人の旅 増補新版』(中公文庫)を読む。「増補新版」というのは、1991年の中公文庫版に「北海道――釧路」を追加したもの。旅行記で、他に隠岐、若狭、伊那、奥津、鹿児島、越前、越後、佐久、浅草、京都、沖縄が収録されている。
 このうち、「伊那――飯田・川路温泉」がわが故郷だ。田村は川路の開善寺に逗留する。開善寺は白隠と鉄斎の書画に富みと田村は書いているが、宮本武蔵の書もあるはずだ。そして、

開善寺のほとりに住む無欲にして高潔なる老画伯の、まるで庵室のようなアトリエへ行ってみよう。ザクロがころがり、モズが一緒に暮らしているアトリエ。それから老画伯と二人で、桑畠のあいだをぬい、薄暗い竹林をさまよい、小高い丘の上にのぼっていこう。シダや、ススキがはえている丘の上から、秋の伊那谷をながめてみよう。わたしたちの視線は、時又の天竜橋をわたり、美しい段丘に散在している、対岸の竜江の村落をつたわるだろう。「あれが仙丈です」――白髪の老画伯が、南アルプスの一角を指さすだろう。「秋が深くなると、あの山が紫色にかわるのです。ま、そのころまでいるのですな、ハッハハハ」

 田村はのちに「恐怖の研究」という長編詩にこの寺のことを書いている。

信州上川路の開善寺の境内で
僕は一匹の純粋な青い蛇を見た
ふるえる舌
美しい舌

 開善寺のほとりの庵室のようなアトリエに住んでいたのは関龍夫さんだ。わが師山本弘の先輩画家で山本も一目置いていた。来春には飯田市美術博物館で個展が予定されている。銅版画家の丹阿弥丹波子が戦時中飯田へ疎開していたとき油彩を習ったという。関さんの最初の奥さんは書家の日田井天来の娘さんだった。彼女の影響か関さんの油彩には書がコラージュされているものがあった。
 田村隆一が関龍夫と交流があったことが何か嬉しい。どちらも私が尊敬する作家だからだ。

 

詩人の旅-増補新版 (中公文庫)

詩人の旅-増補新版 (中公文庫)

 

 

ギャラリー椿の夏目麻麦展「-scape」を見る

 東京京橋のギャラリー椿で夏目麻麦展「-scape」が開かれている(11月16日まで)。夏目は1971年生まれ、1998年に多摩美術大学大学院を修了している。その年にギャラリーQで初個展、以後ベルギーや東京の西瓜糖、藍画廊、Porte de Paris、ギャラリー椿などで個展を行っている。ギャラリー椿では2年ぶりの個展になる。

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 夏目は女性像を描くが顔も輪郭もあいまいだ。表情もよくは分からない。ポーズも座っていたりして動きはあまりない。今回は風景画も並んでいる。
いずれにしろ夏目の特徴はそのマチエールの美しさだ。色彩も麻麦カラーともいうべき独特の魅力がある。いずれも写真やモニターでは分かりにくい。ぜひ実物に触れるべきだ。
 夏目は正統的油彩画家と言えるだろう。現在最も優れた中堅画家のひとりだ。
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夏目麻麦展「-scape」
2019年11月2日(土)-11月16日(土)
11:00-18:30(日・祝 休廊)
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ギャラリー椿
東京都中央区京橋3-3-10 第一下村ビル1F
電話03-3281-7808
http://www.gallery-tsubaki.net